「薄片技術」とは、試料とスライドガラスを接着し、試料を均一な厚さ(一般的には30μm)に薄く、凹凸のない平滑に調製するプレパレーション技術の一つです。透過顕微鏡観察や表面分析によって、試料の結晶構造や微細構造、表面構造などを調べることができます。 主に岩石や隕石や化石ではありますが、近年では、宇宙物質や生体試料にも応用され、研究の発展に多くの貢献をもたらしています。
北海道大学では2名の専門スタッフを有し、幅広い研究支援を行っております。全国の研究者からの依頼にも応えています。国内に数十名しか存在しない薄片技術者として、様々な分野の研究に対応出来る技術の向上と次世代への技術継承に力を注いでおります。
私たちの強み
- あらゆる断面の見える化を実現
- 高精度な平滑性を有する研磨技術
- 豊富な設備、経験に基づく切断 ・接着・樹脂包埋・研磨技術
STAFF
中村 晃輔
野村 秀彦
卓越した技術の紹介
あらゆる試料を薄片・研磨片試料に。
薄片技術は、これまで地質学だけの技術と認識されていました。しかし、今やその貢献先は生物学分野にも及ぶ技術となりました。薄片技術だからこそ提供できる試料があります。
乾式研磨法による試料調製技術
乾式研磨法は、薄片技術初の特許取得技術です。当技術室は、大学・研究機関で初めて使用権を取得しました。これからも幅広い研究支援体制の充実を図ります。
※1 産業技術総合研究所 「乾式研磨法による脆弱試料薄片の作製法」(特許第5633078号)地質試料調製グループ 大和田朗ら
薄片技術の国際ネットワーク構築
薄片技術は、1881年に欧州から日本への地質学・岩石学の輸入と同時にドイツより伝わりました。当技術室スタッフは日本のみならず欧州各地の大学の薄片技術室を訪問するなど、技術者や研究者と積極的な技術交流、技術の融合を行なっております。
MESSAGE
あらゆる試料の断面を見える化・研磨する
中村 晃輔
私たちがメインで扱っているのは、岩石や火山灰、断層面やボーリングコアなど地質の研究に使われるサンプルで、これらを研磨して偏光顕微鏡での観察に適した30μmの薄片にします。最近は、サンプルに光線を当てて反射光や表面を測定する分析装置が発達してきているので、そのような装置にかけるためにサンプルの表面を研磨するという依頼も増えています。
私たちの強みは、あらゆるサンプルの断面を見える化したり、研磨できること。試作ソリューションを始めて、地学以外にも工学や歯学など様々な分野の研究者から依頼をいただくようになりました。多様なサンプルを扱うことが自信に繋がっていると感じますし、自分が作った歯の薄片の写真が歯学の有名な教科書に載った時は素直に嬉しかったですね。
サンプルの「ありのまま」を引き出す
精度の高い薄片を作るため、ひとつひとつ異なるサンプルの特性をつかんで適切な前処理を施すところが私たち薄片技術者の腕の見せ所です。理想はアーティファクト(人為的誤差)のない、サンプルの「ありのまま」が見える薄片を作ること。技術向上のための努力は惜しみませんが、私たちの技術は研究に生かしてもらってこそのものなので、あまり職人気質にならず、学生さんや研究者が頼みやすい、相談しやすい存在でいること、スピーディーかつ確実に依頼に応えていくことを常に意識しています。
技術力を強化し様々なニーズにこたえる
7年前に薄片技術発祥の地であるドイツに視察に行き、現地では研磨の作業を機械化していることを知りました。今、私たちも研磨の機械化に取り組んでいます。機械の欠点を補うために、ガラス加工や機械加工の技術職員の手も借りながら改良を重ね、納得いく機械がもうすぐ稼働できそうです。機械に任せることで、前処理などの重要な工程に集中できるようになりますし、より多くの依頼を受けることが可能になると考えています。全国的に薄片技術者がいる大学や研究機関が減少している中、北大の薄片技術室は予算、設備ともに充実しており恵まれた環境です。だからこそ、研究者の様々なニーズにこたえていくことを使命として、今後も技術の向上に努めていきたいです。